BG、あるいは死せるカイニス


この小説をなんと言ったらよいのでしょうか。星降る夜、天文部の観測会に参加したはずの姉、優子さんが何者かに殺害される、そんな幕開けを迎える推理小説なので、舞台は学園。ですが、全ての人々が女性として生まれ、のちに一部が性転換するという世界――そう、シムーンの様な世界観。

このハードSF であり、推理小説であり、学園モノです。全部の要素が入っていると言う意味じゃない。そのどのカテゴリの小説として読んでも満足できるクォリティで書かれている、そんな欲張りな小説です。

BG、あるいは死せるカイニス (創元推理文庫)

BG、あるいは死せるカイニス (創元推理文庫)


殺された姉。連続殺人。犯人の謎とともに解かれるのは、得体の知れない「BG」の謎。BGとはなにか。・・そんな好奇心にページをめくる気分は、そう、「星を継ぐもの」を読んだ、あのときの気分。世界に謎を突きつけるそれは SFの特権ですが、 謎のなかを突き進む 遙の周りに描かれるのは等身大の学園であって。けれどもシムーンのように、両性という人類の、愛と人間関係は等身大だけれど SFで。こんなに面白い小説は、そうそうないよ、という面白さ。

わたしは、この小説は本当に面白くって、面白いと思って読んでいたのです。けれど終章の、その顛末を読んだとき。ああ、これは参ってしまったと思いました。その凄さに背中にゾワゾワゾワっと、鳥肌が立つのを覚えました。これの凄い小説です。

最後の一文を読んだときわたしは絶句します。たどり着いた先にあったのは、学園青春ものでも推理ものでも、SFでもなかった。そこにあったのは、そう――喩えるならば「神の復讐」。



とってもオススメです。