Kindle(というか電子書籍)についてのよしなきこと

待望の Kindle 日本上陸から1ヶ月ちょいたちました。ようやく Paperwhite も届きましたし、蔵書も100冊を超えましたので、初見の感想をまとめられるタイミングかな?と思います。

というわけで、現時点で思うことを徒然と。

もっている端末について

Nexus7 と Kindle Paperwhite です。

Nexus7 は解像度が高く片手で ぐわしっ! とつかみやすいサイズなので、当初の想像以上に快適な環境です。Kindleアプリは不安定なのがネックですが、お奨めの端末です。

一方のPaperwhite は、個人的には光源付きというのが気に入りません。例えば手の影が落ちたりするとそこの光線具合が不自然で、なんとも読みにくくく感じます。

なら、ライトを消せばいいじゃん、なのですが、ライトを一番暗くしてもOFFにはならないのですよね。また、この状態は本当に質の悪い新聞紙のような品質です(…が、個人的には新聞紙品質にそれほど不満は感じません)

個人的な評価は及第点。

というのを踏まえて、あえていろいろ突っ込みます。

ページめくりの速度について。artonさんのおっしゃっていた 「読み返し」の問題ですが、個人的にはページの読み返しをあんまりしない人なので「読み返しが不便」とは気付きませんでした。推理小説よまないからかな。

一方で、昔読んだ本のある記述が欲しくなったときとかに非常にこまります。あたしはパラパラめくりながら欲しい箇所を探すタイプで、文言じゃなくって文の塊で覚えている感じ。なので、文言検索だと上手く引っ掛けられないのですよね。

というわけで、10ページとかまとめてめくるモードとかあるとすっごく嬉しい。映像プレーヤーの15秒送りとか、1分送りとかああいう感じ。

もう一つはページめくりが純粋に遅いことは困るな、と思います。小説はガシガシ読んでいるときは漫画は基本的に待たされる感覚。今のところ小説ですと表示フォントを目一杯小さくして一ページあたりの情報量を増やすと不快ではなくなるので、たぶん単純な表示更新時間の問題じゃなくって、情報量あたりの更新時間がストレスになっていると感じます。

なので、見開き端末だと一気に解決しそうです。

もひとつ、ページ厚を指で感じられないのは、読み進めるにおいて思った以上のストレスです。多分、残り厚でストーリの山のどのくらいを把握しながら読む癖があるのですね(そういえば短編集をよむときは、いったんその話の最後のページをめくってみる癖がありました)。ページ数じゃなくってパーセント表示なのも、ちょっと困ったな、と言う感じ。しかたないですけどね。

もっと縦長のeペーパーをつくってもらって、プログレスバーみたいなアナログな形で常時表示してほしいかな、とも思います。アプリ版の「進捗バーをタップしてジャンプ」は結構使ってます。

という、まぁ、ないものねだりでした。

電子化の目的(漫画)について

第一に現在紙で持っている本を電子書籍に置き換えることです。おうちのスペース問題です。

「本物」が本当はどんなのだかを知らないで買えるほど、今の電子書籍のありようは安心できません。せめて「文庫版」くらいの信頼を置けると嬉しいのですが...。

買い替えのタイミングは、屋根裏書庫にしまってある本を読みたいな、と思ったときに、探検に出かけるくらいだったら ×××円はらっちゃおうかな?……という感じだと自然に買い替えできそうかな?と考えています。夏はとっても捗りそうです。

漫画の「印刷品質」について

Kindle買ってみるまで想定外だった不満は、解像度が足りていない本が予想に反して多いこと。

本なので「解像度」というより、印刷品質が酷いという言い方の方がしっくり来ます。濁点やルビが蕩けてしまっているのはちょっと何とかしてほしいかも。

Nexus7の解像度でさえ、ボヤボヤっとしてしまうのだから、RetinaiPad mini が出たらどうなってしまうのかな?と思ってしまう。ユーザーから問題視されるようになれば改善させるとは思うのですが、将来 リマスター版と名乗ってリリースし直されそうで、今買い集めるの怖いと感じます。

BL系や、アクションコミックスさんが良い感じ。逆に酷い印象があるのが少女マンガで「のだめ」を買ったときのショックはちょっとすごかった...orz Banana fish も電子版にリプレースしたかったのに。

集英社は、解像度が高いわけではけっしてないのですが、好感のもてる品質で、JOJOはとりあえず買っておけ、という感じ。

漫画の検閲について

人に貸さない、品質がいい……となれば、まずは積極的にリプレースしていくのは BL かな?、、、と思ったのですが、何冊か買ってみて気がついたのが、消しが酷い、ということ。

近年、エロに関しては全体的にキナ臭く、自主規制基準が今は大変厳しいのですが、紙の書籍と同じ物を買ってもこんなに消されているとは思いませんでした。

性器の輪郭を消したりモザイクを掛けたり、というレベルではなくって、性器周辺をまるまるごっそり白く塗りつぶしてしまう暴力的な修正で、ときには一コマまるまる真っ白になってしまい、表現として成立しなくなっていたりも。2011年9月発行の本の電子版ですら「酷く」なっているので、今は買いじゃないとしか言えません。残念。

この検閲ですが、電子化特有の事情、、たとえばどこぞの電子書店の「自主基準」にあわせたためのものなのか、単純に世間一般がこの1年で本当に検閲側に傾いたのかはよくわかりません。

本当は今月の新刊と紙と電子版の両方で買ってみて検証するべきなのでしょうが、それは後々の課題ということで(^^; (だれか纏めてないかしらん)

検閲について

規制基準が厳しくなって、「これから」の作品が規制されるのは、(個人的にはダメと思ってますが)仕方がないのかもしれません。けれど、「これまで」の出版物に遡及して「消し」が厳しくなるのはちょっと違うと思っています。

規制を踏まえた表現というのもちろんしていませんので、大抵は無残なことになってしまいますし、作品そのものが伝えたいものをこわしてしまうからです。作者の思いも、伝えたいことも、その当時の文化もみんな否定してしまいます。

そして、電子書籍ですと、書店にならぶ本だけでなく過去自分の買った本が ある日突然検閲されている可能性が無視できないのが恐ろしいです。

特にエロや「差別表現」に関しては、この国ではその本当の益や害をまったく検討せず、その時代の勢いと空気だけで規制されてきた実績がありますので、電子書籍にて購入済み本にたいする遡及検閲は現実にあると思っていたほうが良いと個人的には思っています。

となると、やっぱり検閲境界にある表現については、やはり紙の本で買っておくべきかな、と考えてしまいました。(でもおうちのスペースが...耐荷重が...)

値段について(漫画)

全然お得感のない値段設定ですが、ショップを価格順に眺めるとこれは下がらないかもね、と思ってしまい巻いた。

というのは100〜300円は、32p程度の本が並んでいて(つまり、同人誌ボリュームですね)、それとの相対価格として400〜500円というのが上手く並んでいるからです。いわゆる「下支えラインナップ」というやつで、こう言う形で定着しちゃうかなぁ、と思います。

残念。300円くらいに抑えてくれれば、スキャン業者なんて出版社が問題することもなかろうに、とも思うのですが、著作権法の改正で潰そうとするあたり、この国のセンスの無さだよね、と思ったり。

コミックス特有の表現について

具体的には「カバー」の存在と、見開き表現です。

ここ10年ですっかり定着した「カバー下」と、カバー全体をつかった表紙ビジュアル、帯にネタに仕込んだりするお遊び等々。ここらへんがオミットされるのは「文庫版」だと思えば、まぁ、仕方がないかな?・・・と思うのですし、電子版に引きつられて紙の書籍からこれらの文化が消えることもないかな?とおもうので、まぁ個人の思い入れの問題とおもいます。

一方、見開きやページ跨ぎコマなんかは、消えてなくなっちゃいそうで怖いです。見開きの出来るΣブックみたいな電子書籍端末をどこかがつくらないかなぁ、と願います。

ショップについて

なぜ「ラノベ・BL」というカテゴリなのか。

なぜ、、どうして、、、理解不能です。
(ついでに「男の娘」はBLとはジャンルがちがいまする、という点も同時に突っ込んでおきます)

ラノベについて

というか、挿絵について。ああいうのは見開きの片方が絵だから嬉しいのであって、絵のページと文のページが個別、順番に表示されてもちっとも嬉しくないですね。見開き端末が本当に欲しいとおもいます。

それが駄目なら、フェザー文庫がやったみたいにページのした1/4に挿絵を入れる・・みたいなのが、ラノベの「嬉しい」の感覚をうまく表現出来ると思います。



まとめ。というか、将来の不安と希望。

電子書籍は正直「文庫」だなぁ、と思っています。だから文庫版で諦めるべきところは諦めるべきかなぁ、と思うのです。ここまでは良いのですが、もうひとつ、本が自分のものになっていない感覚は思った以上に不安で、薄氷の上を歩くが如く。自分の本棚におさまっている感触が全くないのは意外でした。

東京都の青少年育成条例のその後をみれば、「有害図書」と指定された本が事実上の焚書にあっている(絶版になりAmazonでも買えない)現状をみると、自分の書庫が誰かの手に委ねられている不安は大きいです。

特に漫画は酷くって、エロ関連や差別用語関連は、簡単に検閲にあうので、その年に出版されたからこの表現がゆるされた・・・というのはざらです。そんなのを実感している漫画愛好家にとっては、本当は紙で買う意外の選択肢はないのかもしれません。

もうひとつは、端末の自由度の問題で、たとえば GooleBooks でしか 数学ガールはないからそこで買いたい、とか、Amazonでいっぱい本もっているけど、今度の Sony Reader は使いやすそうだなぁ・・とか、そういう組み合わせの自由が欲しいなって思います。

といういろいろを解決する一つの案として、電子本屋さんと電子書庫サービスを分離して、互換させてほしいです。

最後に、本の並べ方というのは、本屋さんのアイデンティティであり、魅力です。素敵な本屋さんはいっぱいあって、わたしはそういう方向で「ご贔屓」を決めています。そういう本屋さんのバラエティが電子本屋さんでもたのしめるといいな、って思います。