Chromebook Flip C100PA を買いました
普通に働き始めると、やっぱりいつでもPCは持ち歩きたいなぁ、と思ってしまう、PC原理主義者の私です。スマホもタブレットも電子書籍端末もいいのですが、受け身なだけでは満足できないのです。……が、そこはオールドタイプなので、何かを書こうとするとキーボードが欲しくなってしまいます。
というわけで、主に常時携帯のモバイルPCとして Chromebook Flip を買いました。
10インチっていいよね!
結論から言えば、小さくて軽くて安いからです。
ご存知の通り、今年の頭に ThinkPad X121e を買ったばかりなのです。11インチの X121e は、世間一般には十二分にモバイルPCなのです。
なのに新たにモバイルPCが欲しくなったのは、わたしにとって11インチは常時持ち歩くには少し大きくって、少し重い。お外で明確にPCを使う用途がある場合にはいいのですけれどね。
このサイズ・重量感は 多分わたしにとっての最初のモバイル機 ThinkPad s30 から来ているもので、10インチ、だいたい1kgくらいというあたりに「超えられない壁」があるみたい。
どうして Chromebook Flip?
一時期のネットブックブームも去りタブレットに淘汰され、10インチPCは非常に選択肢が厳しくなりました。このジャンルは結構水ものなので、市場にあるうちに買わないとダメ…というのがわたしの経験則。後継機待ってみても碌なことないです。
今買うなら Let's Note RZ4 か この Chromebook Flip。両方共とても魅力的です。ヨガタイプなのも「悪魔でPCだけれども、ごろ寝シチュエーションでタブレット風にもつかえる」という体はいいですね。トップヘビーにならないし、合体ゆえの重量増もないのでキーボード付きでも軽く仕上がるのは美徳です。
そんな両者の中でChromebook Flip を選んだのは、なんといっても値段のやすさ。そして Chrome OS への好奇心。ついでのおまけで見た目が好み*1。どうせ Linux を使いたいので、その環境構築の容易さもあるかな。
開封の儀
と、前口上は以上にして、開封の儀。……実はわたし、Amazon.comから個人輸入で買っているのですが、記事にする前に 日本でも発売開始されちゃって、ちょっと…いえ、だいぶ悔しい。
ちなみに購入したのは上位の 4GBメモリモデル。お値段は、ちょうどセール中でちょっとお安くなっていて、送料込で $268.87。これに輸入税等の前払金が $21.51 (後で戻ってくるかもと淡い期待)の、トータル $290.38 、日本円にして \36,369 でした。国内コンシュマーモデルはメモリ2GBしか選択できなくって \42,980 なので、日本語キーボードにこだわらなければ、こちらのほうがお得です*2。
箱はこんな感じです。……なんだか送られてきたときから開封済みだったのですが。
まぁ、気にしないことにします。
箱をあけるとこんな感じ。
決してコストをかけているわけではないのですが、シンプルで好印象なパッケージ。
箱から取り出してみれば、なんだか MacBook っぽいアルミのボディ。パクリ(というかリスペクト?)といったら見も蓋もないですが、ミニマリズムなデザインは、Chromebook のコンセプトとあっていて、可愛くて好き。
サイズ比較と各種ポート
さて、これまでのモバイルマシンと比べてみましょう。
フットプリントはほぼ互角ですが、
厚みはこんなにちがいます。Chromebook Flipならば 2冊……ううん、3冊は束ねられそうです。
ちなみに マイ初代モバイルPC の ThinkPad s30 と比較。
横方向のサイズ感は近いですが、さすがに4:3のアスペクト比だから奥行きはだいぶ違います。
ちなみに、現在のメイン Linuxノート ThinkPad X121e と重ねるとこんな感じ。
11インチと10インチじゃ、やっぱりだいぶ大きさが違いますね。
サイズ感がわかりやすいように文庫本と重ねてみました
こう見るととても小さいパソコンに見えますね。
ポート類
左右のポートを見てみましょう。
電源は「ちょっと厚めの Micro USB」といった風情の独自のコネクターになっています。ACアダプター部は Nexus7(2012)のを彷彿するもので、PC用というよりスマホかタブレット用という印象なのですが、見た目と裏腹に 12V 2.0A の出力なので、もちろん Micro USBでは給電出来ません。将来、後継機種がでたら USB Type-C ポートに置き換えられそうですね。
その並びにはインジケータLEDと電源ボタン、音量ボタンが。いよいよタブレットPCじみてきますね。 ちなみにChromebook は ファンクションキーの位置に音量ボタンがあるので、こちらは音量ボタンはホントにタブレットモード専用です。
反対側(右側面)。USBとかmicroHDMIとかmicroSDカードスロットとかのI/Oポートで固められてます。
ちなみにこの写真では microSDカードが挿入済み。挿しっぱなしでも出っ張らないので、16GBしかないストレージの拡張に良いかな?*3
キーボード
いつまでもアルミ板風の状態で眺めていても仕方ないので、起動しませう。
天板はアルミ、ボディ底やヒンジは銀色塗装の樹脂、キーボードの面はおそらくアルミ版のプレス加工かな。一見 MacBookっぽいく仕上がっていて、その実しっかりコストダウンしているのですが、手に触れる面がちゃんと金属になっていて、ひんやり感触に高級感を感じて良い感じ。
キーボードは Chromebook のシンプルさと相まってかなりかっこいいです。
肝心の打鍵感ですが、ストロークが若干浅いかな、というところはあり、底をフォローすべくかクリック感が強めになっているのは、薄さを追求している「いまどき」のキーボードだな、と思います。が、それでもそれなりのストロークを確保していて、かつ、打鍵感もクリアな感じで結構打ちやすい、総じて悪くないものに仕上がってます。
この薄さ、この価格帯であることを考えれば、購入前の想像以上に立派なキーボード仕上がっていて、満足です。天板が一応アルミプレスなので、強度的にたわみにくくなっているのも貢献してるのかな?
キー配列
Chromebook のキーボードデザインは PC の歴史的経緯を引き継がず、あくまで Chromebook として ChromeOSと抱き合わせで再設計されています。だから大変シンプルで使いやすい配列に仕上がっています。
スペースバーの列がスッキリしているのが好印象です。必要なキーに絞り込んで、残したキーには十分なサイズと必要な「空白」を与えるというのは、優れたキーボードデザインの鉄則です。
CapsLockを排して 検索キーを配置しているのは さすがだな、と思いました。Windowsですと、同等の役割のキーを「Windowsキー」と呼び、スペースバーの列に無理やり割り込ませてしまったのは、アドホックの極みでしたから.. (^^; 一方でここは、このユーザーの好みがうるさそうな一等地。OSの標準機能で簡単にアサインを変更できるあたりは「わかってる」と嬉しくなります。もちろんあたしは「CtrlはAの横」!
大胆に Deleteキーを削ったところもいいです。当然 PgUp/Down や Insert, Home/End もなくなってしまいましたが、これら「デスクトップPCでメインキーの隣にあったキー」は、ノートPCではいつでも配置に困ってしまうものでしたが、旧来の互換を考えると削れない部分でもありました。これは OS毎デザインできる強みですね。
ファンクションキーの列に用意されたキー郡は、Chrome OS とノートPCに必要な、「ファンクションキー」がアサインされています。使ってみれば確かに「キーとして有ると便利」とか「物理キーで操作できないと困る」機能で、ちゃんと考えられてアサインされているな、と実感します。
このソフト・ハードが一体で設計されている感とそれゆえの設計の美しさは、どことなく Mac を想像させます。なるほどChromebookを指してのプアマンズMacBookは、こういうところを指してるのかな?と思いました。
さてさて、話は変わって、こちらは発売されたばかりの日本語版 Chromebook Flip のキーボード。カタログもWebサイトも英語配列の写真なので、店頭展示機をパチリさせていただきました。
変則キーサイズなのは BackSpace の横のキーくらいで、CtrlもAltも大きく、小さいPCの割にはキーサイズに余裕があってこちらもいい感じ。
crouton で Ubuntu を入れる
ChromeOSだけで完結するのが本来の使い方だとは重々承知しているのですが、やっぱりLinux使いたいよね、ということで Cruton を使って Ubuntu 14.04LTS (Xfce) を入れてみます。
crouton(ChRome Os Universal chrooT envirONment) を使えば、お手軽簡単に chroot環境下に Ubuntuとかをこしらえることができます。
crouton を使うには、まずはデベロッパーモードを有効にします。esc + reload を押しながら電源ボタンを押すと、レスキューモードで起動します。
そこで Ctrl + d を入力するとデベロッパーモードに移行します。
デベロッパーモードに移行するにはローカルデータ消しちゃうよん、やだったらすぐ電源切ってね、と言われるので無視します。
デベロッパーモードでは crosh (Ctrl-Alt-T で起動するChromeOSのCUI)で shell と入力することで bash が使えるようになります。ここから
$ wget http://goo.gl/fd3zc -O ~/Downloads/crouton $ sudo sh -e ~/Downloads/crouton -r trusty -t xfce,keyboard,audio,cli-extra,extension,xiwi,chromium
で、Ubuntu 14.04 環境を構築します。ちなみに -r オプションは インストールするディストリビューションを、-t はパッケージを選びます。
Shellが動くとなんか「パソコン」って感じがしていいですね。ちなみに結構時間がかかりますので、気長に待ちます。
インストールが終わったら、Chrome 拡張の 「crouton integration」 を入れておきます。
sudo startxfce4
すると、(当然ですが) Chrome とは別プロセスで xfce デスクトップが立ち上がります。
わーい。
ちなみに crouton integration は、先ほどの -t xiwi と合わせて、Chrome のタブとして Ubuntuを動かすことができるようにする Chrome拡張です。はこれなしでも crouton は使えるのですが(その場合はCtrl + Altで切り替えるそうな)、やっぱり、
みたいなことができるのは、とても便利です。
日本語環境化
日本語環境化は、とても簡単なので、ちょろちょろっと。
$ sudo apt-get install language-selector-gnome
$ gnome-language-selector
で日本語を選んで、ログアウト→ログインするだけ(...だったと思う)。
追記:
上記内容は多分嘘で、ubuntu 日本語 term の PPA の追加とかやらなきゃダメだと思う。参考:ubuntu on Chromebook の日本語化 - 物欲投げ捨てblogさん。あと、最初「うわーん、日本語のWebページが文字化けしてるよぉ」とまずフォントだけ入れた記憶もあったり。
(追記おわり)
日本語入力環境はもう少しだけ面倒くさくって、
$ sudo apt-get install fcitx fcitx-mozc fcitx-libs-qt5 fcitx-frontend-qt5
で環境を入れたら、Xfceの[アプリケーションメニュー]→[設定]→[xcitx設定]を選び、お好みに設定。
sudo で エディタを起動して、 /etc/profile に以下を書き込み
export GTK_IM_MODULE=fcitx export QT_IM_MODULE=fcitx export XMODIFIERS="@im=fcitx"
電子書籍リーダとしてとか
Chromebook Flip を選んだのは、いつでもモバイルPCの用途と共に、ゴロゴロ Web閲覧ツールとしても期待していて、そういう用途に ChromeOSはピタリとハマるんじゃないかな、と期待しています。タブレットみたいにもつかえるノートPCですね。
タブレット風でもその実態はノートPCなので、いつでもキーボードが引き出せて、お腹の上とかでタイピングできるのが強みです。
で、ChromeOS、もちろんブラウザは問題ないのですが、電子書籍リーダとしてはちょっと弱いな、というところ。でも Kindle Cloud Reader で少なくとも洋書と漫画は読めますので、弱いながらもそれなりに。
両手なら楽勝、片手でもギリギリ重くないかなってくらいの重量ですので、一応タブレット的に使うのも現実的な大きさ・重さです。
電子書籍リーダーとしての Chromebook Flip ですが、画面面積からいうと、だいたい Nexus7(2012)と同じサイズのページを見開きで表示できるような感じ。
Nexus7を上に重ねてとってみました。
だいたい同じくらいのサイズですね。
このサイズは漫画文庫よりもちょっと小さいかな、くらいで結構読みやすいサイズだと思います。が、Nexus7 は あの大きさで1280x800px。Chromebook Flip も面積は倍以上なのに 1280x800px なので、やっぱり解像度が足りません。
PCの画面としては十分な解像度なのですが、漫画を読むにはもうちょっと解像度がほしいですね。とはいえ、「読む」ことは十分できますので、電書リーダーとして意外に活用してしまってます。
で、ChromeOSってどう?
なんといっても、この低スペックマシン(Rockchip)であっても、軽い軽い! サクサク動きます。専用機ってすごいね。そしてバッテリーが信じられないくらい持ちます。こんなに薄くて軽くて9時間持ってしまう。ChromeOS という割りきり環境のおかげだけれども、実感としてのコストパフォーマンスがすごいので、これは本当にメリットですね!
キーボードの項でも語ったのですが、キー配列のデザインは、OSと一体で考えてあるだけあって、チョイスや使用感が「理にかなっている」と感じます。Aの横にCapsが来た経緯とか、日本語キーボードの醜い拡張劇とか、とかくキーボード配置は惰性と考えなしと政治で汚れ続けた歴史なので、理詰めで最小構成を目指したギークらしい使い勝手のキーボードが「標準」であることは、本当に快適です。
アーキテクチャの視点でメリットを語るならば、いわゆるアプリケーションがインストールできないことが、操作体験の統一に役立っているのですね。Chrome というアプリに向けて「いわゆるOS」も含めた 何もかもが最適に組み立てられるのです。これはちょっとAppleっぽいユーザ体験ですね。
よく「ブラウザしか使えないPC」「普通のPCに比べてできることは限られる」と紹介されて、それは間違ってはいないのだけれども、そういう「Limited PC」というのとはちょっと違う感触です。この blog を見に来る人には通じるかな、とおもいますが、いわゆる「Emacsから出ない」と本質的に変わらないかな、と思いました。
つまり Emacsian に(比喩ではなく、本当に) EmacsOS を与えてしまったようなもの。…そう考えれば、この OS が 意外にも玄人好みのアーキテクチャであるという感触に共感してもらえるんじゃないかしら。
Chrome OS の不満点は?
今のところの唯一の不満が、Google日本語入力で ローマ字テーブルをカスタマイズできないことです。つまり AZIKが使えない。
より本質的には、不自由さや不具合を自前で解決することができないことでしょうか。そこは割り切りですけれど、環境側の整備をまたなくてはいけないので、不運にもちょっとした「障害物」が現れた時、それを避ける手段がないため、ショーストッパーになってしまうこともあるでしょう。特に日本のユーザはまだまだ少ないので、不具合が未解決だったり、必要な道具が揃ってなかったりというシチュエーションに遭遇することが多そうです。「普通の人向け」は、まだちょっと危険かな?
まぁ、そこは Linux 上で暮らせばいいわけでして、そういう人にはとても過ごしやすい環境です。
「もう少し内蔵ストレージほしい(Ubuntuも入ると16GBじゃ不安です)」とか「Amazon さん Cloud Reader で日本語の技術書読ませて」とか「Dropbox クライアントは ARM 対応して欲しい」とか、小さなハードルはあるのですが、そこも醍醐味です。
なにげに満足度の高い買い物で、わたしはとても気に入っています。