ヴィシー・フランス(山崎雅弘 戦史ノート)

「今の自民党の言っていることって、ヴィシー・フランスの『国民革命』にそっくりだ」というのをどこかでみて、なんかいい本無いかな、と Kindle で探してみた次第。雑誌の特集1つぶんくらいの分量で、こういう本がいつでも手に取れるというのは、電子書籍ってとても良いな、と思っています。

ヴィシー・フランス

ヴィシー・フランス

ヴィシー・フランスは、ナチスドイツに敗戦後のフランスで発足した政権で、後に連合国側に逃れたフランス民で構成された「自由フランス」に敗れ、ナチスに迎合した戦犯政権のように言われていたと記憶しています。

学校で習ったときは「両陣営にそれぞれ『フランス』がいるなんて、チートというか、頭良いなぁ」と思ったのですが、逆に言えばそれだけしか記憶にない存在ですので、これを機にちょっと勉強してみようと思った次第。

さて、ヴィシー政権の「国民革命(フェボルシオン・ナシオナレ)」とはこんな感じです。

フランス革命以来の「自由、平等、博愛」という『軟弱」な思想が現在のフランスの危機を招いたという認識から、ペタンはそれに変わる価値観として「労働(トラヴァーユ)、家族(ファミーユ)、祖国(パトリ)」の三つを提言し、ナチ党の世界観にも通じる国家社会主義的な価値観で、新たなフランス社会を築こうと考えた。

なるほど、確かにそのまんまかも。

わたしは、マイノリティ側に立つことが多いタチなので痛感するのですが、日本は本当に「自由」も「平等」も「博愛」もないなぁと、感じることがあります。なんというか、「自分たち」じゃないものにたいして狭量なんですよね。それはどこの社会でもそうなのかもしれないけれども、人間としてはそうなってしまうものなのかもだけれども、「狭量であることはいけないことだ」という建前でも持っていれば、それなりの抑止力にはなると思うのです。

ただ、「苦しい時期にはみんなで力を合わせて頑張ろう」となるのも自然な流れなんだよな、そうすると「好き勝手やってる」人を容認できなくなるのも仕方ないのだよねとも思います。難しいですね。

さて、そんな「知りたかったこと(=国民革命)」以上に、面白かったのが ヴィシー政権を取り巻く時代背景。その当時のフランスの政権と国民のいろいろな背景、ヴィシー政権がどのように立ち上がり、多くの国民の支持を得、フランス人がそのときなにを考え、そして何故に当初の支持を失っていったのかという流れを、なるべく中立に書こうとしている本書籍に、かなりの好感を覚えました。それでいて全体にコンパクトにまとまっているのも良いです。

これはいいものだ〜、と思ったので、シリーズから何冊か買ってみたのですが、どれも面白いですね。特に沖縄戦は本当に面白かったです。

このシリーズであえて苦言を申すなら、本ごとに横書きだったり縦書きだったり、フォントが小さすぎたりすること。どうも初期のモノは横書き極小フォントで、それがだんだんと読みやすい方向に修正されていったという感じです。沖縄戦は初期なのでかなり読みづらく、ヴィシー・フランスは後期なのでとても読みやすかったです。

何かのニュースをきっかけに、背景に興味を持ったときに、ちょっと買ってみて勉強するのに、ちょうど良い分量と踏み込み度合いのシリーズです。