夏への扉

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

前に読んだはずなのだけれど、ぜんぜん中身を思い出せないのでもう一度買って、読んでみました。しかし、読んでる最中も全然思い出せない、ホントに読んだのかいな、私。

夏への扉は時間SF です。とはいえ時間を超えた伏線はあまり多くなく、極々シンプルな構成。時間SFとしては 最高級の 「運命のタロット」(そう、タイトルや初期の展開に反して、運タロはSFなのだ)とは比べるべくもありません。

しかし、この小説は楽しいです。前半の落ち込み、後半の上り調子とシンプルなメリハリが とても爽快です。夏への扉は決定的運命を示唆しますが、それは幸福に違いないという確信から読後には希望と前向きな意識に充ち満ちます。運タロは世界に不幸な運命が充ち満ちていて、その中で幸せになるとはどういう事かという風に物語を振っているのですが、夏への扉はまさに「夏への」扉であって、例え冬の扉しかなかろうと、どこかに必ず夏への扉があるはずだというポジティブさが本作の全てです。

気持ちよく繰り返し読める本で、名作と呼ばれるには訳があるというわけだなぁ、と思うのです。