カラクリ荘の異人たち2

1 を読んだとき、シリーズものになってほしいと願っていたので、これが出たのはとてもうれしい。



とかいいつつも、1の内容を全然覚えていません。多分鬱が入っていた時に読んでいるので、脳の違う部分からじゃないと記憶が引っ張り出せないのでしょう、――といいわけ(決して年なんかじゃないわ)

そんなわけで、プレイバック「カラクリ荘の異人たち1」。

このお話は、親に愛されたという実感を与えられずに育った高校生の少年が、彼方と此方の狭間の町で下宿生活を始めるお話。

(お母さん……?)
呼びかけても反応がないから、おそるおそる手を伸ばした。母親の腕に触ろうとして――。すごい勢いで突き飛ばされた。
――触らないで。
母親は叫んだ。
――あんた誰?あんたなんか知らない。

彼は、親に忌み嫌われた幼少の経験から、「怖い」という感情が欠落してしまっています。

「あのね。普通の人間だったら、もし行き逢い神が見えたら逃げるんだよ。アカネが何も言わなくても、見ないようにして行き逢い神がいないところまで自分で逃げるの。行き逢い神はフキツだから。普通の人はそんなこと知らないけど、でも知らなくてもみんな知ってるの。誰にも教わらないのに知ってるんだよ。太一は逃げなかったよね。行き逢い神、怖くなかった?」


* * *


さて、今作。

「阿河君てさ」
太一をのぞきこむように、采奈はいきなりにゅうっと顔を近づけた。
「どうしてか知らないけど、もしかして自分のこと好きな人間は誰もいないって思ってる?だからいつも一人で居るの?」

うぐ。

前作に引き続き、普通そうにみえて大変病んでいる主人公(そこに現実感があって尚のこと胸が痛い)がゆっくりと世界との関わりを取り戻していくお話。プラス、前作は太一にかかりっきりだったので、今作では周りの人たちもすこしづつ。

前作ほどの話の起伏を感じられないのは、太一の変化について、転がり始めた前作と、転がりつづける今作のインパクトの差かな、とおもいます。章を越しても太一が変化が少ないから。ただ、シリーズとして長くゆっくり変わっていくお話になるとおもうので、それでいいのだ、と思います。

妖怪テーマだからか、どことなく夏目友人帳を連想してしまうのです。(だからあんな風にちょっとハートフルな短編の集まりになりつつある今作にまったりと期待してしまう)あ、でもそれほど似ては居ないですよ。