天体の回転について
小林泰三さんの同名SFにつられて、せっかくなので読んでみたり。
- 作者: コペルニクス,矢島祐利
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1953/05/05
- メディア: 文庫
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岩波文庫版は、原著第一巻だけの訳になっていて、どちらかというと当時の時代背景や世界観を読むためといった体裁になっています。すっごく薄くって、「えっ?たったこんだけ??」と思ってしまうので、お気軽に読めちゃうかも。ガリレオの「星界の報告」の時も思ったのですが、当時の科学レベル的に今時代の人なら専門知識のない非人でも普通に理解できる程度の難易度で、とても読みやすいです(旧漢字満載でまったく改行のない文体を除く)。
新鮮だったのが、なぜ当時の人々(賢い人)が地球を宇宙の中心と考えたかという下り(それを否定するためにコペルニクスがまず説明してくれる構成)。
土や水といった重いものは下に落ちていき、煙や火といった軽いものは上に登っていく直線の運動をします(そう、空に立ち昇る煙を斥力的に捉える観点も新鮮でした)。落ちていき落ちていき、落ちきった終点・・・そこが世界の中心だから、地球が世界の中心なのです。なるほど!万有引力という考え方はまだなくって、世界の重力の中心が世界の中心という考え方はなるほど自然です。そっか、星の動きだけをみて地球を世界の中心でないと考えるのは、「じゃあ、重力は?」となるかもしれない、と思ったり。
・・・単に宗教的盲目によるものと考えがちだったけれど、やっぱり天動説は科学なんだなぁ、と思ったり。
ていうか、煙が空に立ち昇る力と重力、回転運動は別のものと しっかり知識がしきられていて、万有引力の存在も自分が世界を観測して考える前に知ってしまっている、そんな世界に生まれてきたわたしにとって、コペルニクスの学説よりも、コペルニクスが間違っていると説く為に説明する当時の常識のほうが新鮮で面白かったりです。