妙なる技の乙女たち

お仕事ウーマン達のオムニバス形式なお話です。

よくある一般的なお仕事、「宇宙服等の工業デザイナー」「メガフロート都市の海上タクシー」「不動産会社の社長」「保育士」「起動エレベータのアテンダント」「パワードアームでルビーをも手彫りする彫刻家」そして「宇宙開拓会社のマネージャ」といった職に打ち込む彼女たちをリアルに、そして情感豊に描く傑作です。

([お]6-1)妙なる技の乙女たち (ポプラ文庫)

([お]6-1)妙なる技の乙女たち (ポプラ文庫)

・・というわけで、小川一水さんの SF小説。起動エレベータのある島「リンガ島」を舞台に様々なお仕事で働く女性たちを描くオムニバスストーリ。でもでも、舞台描画があまりにあまりリアルすぎて、ぜんぜん SF という感じがしないのです。そして主題もそこじゃない。あくまで仕事と女性がテーマの作品群です。

そして。本当に、本当にこれが面白いのです。「男に打ち勝つ」でもない、「男と同じに」でもない、(ステレオタイプの)「女性を捨てて」でもない、本当に女性「が」仕事をする話で、なんとも説明しづらいのですが、そういう話なのです。彼女たちは「彼女」じゃなくてはいけない。女性であって、女性が仕事をするというのはどんなものなのか、という妙な感触の良さがこの小説をとっても魅力的なものにしています。

一方SFとしても恐ろしいばかりの出来で、どれくらい過ぎかと言うと、読んでも読んでも まったく SF という気がしない。起動エレベータがあったとき、世界はそうであるだろうなという自然さがすばらしくって、しかも想像の世界にありがちな 直感的に感じる書き割りの匂いがない、わたしの知らない世界がどこまでもどこまでも地続きになっている中で、知らない職業にであって感心するという、そんな体験がほんとうに心地よいのです。・・・いけない、はやくも2011年のベストSFかしら、これ。

「そうそう、EIP6th の一番初めの頃にお話ししたことですけど、結局それが足りなかったんじゃないですか」
「それ?」
「地元料理。地元料理のない土地なんてありますか。あるならそこは、まだ人の土地じゃないんですよ。旅人が訪れて去るだけの、かりそめの土地なんです」

世界に人がいて、世界とかかわって育まれ、そうして世界を変えていくとき、世界と人は相互作用をしています。けれども人は人であって、読んでいるわたしと、その世界の人が地続きだと実感できて、その世界の人と世界が地続きだと実感できれば、その世界はわたしにとって現実のように感じるのです。

わたしはこれを近い外国の話として読むことができます。小川一水さん凄すぎ!というわけで超お奨め!!