アニメがおもしろかったので原作も。

紅 (紅シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

紅 (紅シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

でも、どうにもだめです。世界観が、病的すぎて。アニメがどうしてあんなに健やかな感じに仕上がったのか、不思議なくらい病んでいます。

なるほど、アニメの紅は、二次創作だなぁ、と思います。キャラクタ名のキーワードといくつかのエピソードだけもらっていって、設定も世界観も物語も、そしてキャラクタの人格も違ってしまっている。私は二次創作であるアニメ版のほうが大好きなのですが、原作が好きで割り切れない人にはつらいアニメ化だったかも。

で、アニメのことはさっぱり忘れて、小説だけ。とにかく世界観が病んでいます。ファンタジーになるほどこの世界遠くなく、かといってリアリティもなく醜悪に歪んだ悪意のレンズから覗き込んで写し取ったような世界。夜見る夢の方の悪夢のよう。私にはこの世界がどうしてもどうしてもなじめないのです。

その一方で、かなりライトノベルのヒーローっぽくなった真九郎、アニメの「変人だけど一般人」を超えてなんかすごい設定がついている闇絵さん、環さん。こちらはこちらでシリーズ展開が楽しみになるのだよな、という佇まい。一言引用すれば、

「俺は亜宇商会所属、《鉄腕》ダニエル・ブランチャード!名乗れ、小僧!」
「崩月流甲一種第二級戦鬼、紅真九郎」

という感じ。アニメの生活感とリアリティは原作小説にはないけれど、ファンタジー色は濃くなり痛快娯楽としては原作のほうがまっとうです(一点をのぞけば)。

平たく言っちゃえば普通によくあるライトノベルかな。(失礼でごめんなさい)でも、一つだけ普通じゃないところ。飛び抜けているところがあります。繰り返し繰り返しになりますが、それは世界観が病的に悪意に染まっていること。

それは、作者は本当に病んでいて、だから狂気がこの物語に満ちあふれているのかと、そういう風に私は感じます。私はこの狂気に(車酔いの意味で)酔ってしまい、どうにもダメなのですが。だから紫、彼女だけが頼りです。

物語が狂気に押しつぶされないで無事に完結するといいなって思います。