でかい月だな

何となく手に取ってみた一冊でしたが、大正解!

でかい月だな (集英社文庫)

でかい月だな (集英社文庫)

帯に「生まれて初めて書いた小説がこれか!」「才能とはかくも残酷なものである」とか書いてあって、いつものあおり文句に、なんと大げさなっ、と笑ったのですが・・・・ごめんなさい、全然大げさでも何でもなく、すげぇ(・・と、はしたない)もとい、すさまじいです。

ぶっちゃけ、「なんの話なの?」と聞かれてもわたしには答えられない。だって、あらすじにできない。というかあらすじにした時点で別の話になってしまうのだ。

そして読んでいるときも、この話がどんなジャンルの小説かすら、わたしにはわからなかった。(ここらへんは東亰異聞 を読んでいるときの感覚と似てる)わからないまま話が進んでいって、先にどんな解決や収束があるのかも、まったく予想もつかせないまま、なのにグイグイと引き込まれて読むのがとまらないのです。

だから、わたしに出来るレビューは冒頭から一部を引用するくらいなもの。

綾瀬はガードレールに浅く座り、だるい仕草で煙草を口元に運んでいる。こいつを観ていると、音楽の時間に習うアルト笛の音色を思い出す。透き通っているのか淀んでいるのか、子供っぽいのか大人びているのか、男らしいのか女性的なのかよくわからない、あの中途半端な音色だ。だからこうして綾瀬の隣にいると、ぼくは愉しいのか哀しいのかよくわからない、中途半端な気分になる。

是非是非、読んでみてください。約束ですよ!