死なない生徒殺人事件

わたしは、「アスキー・メディアワークス文庫」というレーベルがいまいちなんなのかよく分かっていなくって、ラノベユーザの卒業後進路を想定しているふうなのは分かるのですが、そこがどんな地点なのかがわからないというか。そんなわけで買ってみました。

不死の生徒が殺人された・・・彼女は死後「生き返った」がその生き返り方(ネタバレ回避)ゆえ、前後の記憶が定かではない。・・彼女の不死の秘密は何か、誰になぜ殺されたのか──という、いかにも謎が謎を呼びそうでありながら、謎解きに期待すると、そこは浅いのです。

だって話が狭くって。最終的に描写されるキャラは3名に帰結するというか、そんな感じなので、これ以上内容に踏み込めば、犯人バレを回避することすら難しい。

不死の少女「識別組子」の独特のしゃべり口や、文体の持つ雰囲気、「四角形と五角形の中間の図形」など引き込まれる演出に、面白みを感じるのですが、それだけに、終盤の犯行についての種明かし、犯人と動機はともかく、それに至ったことへの「理解のできなさを期待する描写」は、正直「あぁ、詰まらない着地点でおわってしまった。もったいない」と思ったのです。

が、そう思った矢先の、最後の最後で開かされる落ちがなんとも秀逸でした。そう、底こそが罠。うみゅ、なるほど、そうきたか。やるなー。


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振り返れば、これは推理や「不死」への秘密追求を主題としていない。じゃあ何だったのかな?と、思うのだけれど、難しいよね。タイトルからストレートな作品と思って手に取ったのに、予想外にもちょっと捻った作風で、気付けばメディアワークス文庫のニッチがどこか、さらにわからなくなってしまった わたしでした。

さー、次は何読もうかな。

余談

野崎まど さんは、恥ずかしながら知らなくて、著者紹介を読んだのですが

東京都墨田区生まれ。2009年『[映]アムリタ』でデビュー。

その他の作品に『妖精電撃作戦』(未発表)、『第十七回落雷小説対象選評』(未発表)、『津波でおまじない』(未発表)など。

って、その他って未発表作品だけじゃ(ry