温かな手

死体を目の当たりにしての世のワトスン役の冷静さはとても一般人とは思えない。そんなお約束への回答として、SF というか 吸血鬼のような、人のエネルギーを吸う(ワトスン強制落ち着かせ術)、賢く聡明な生き物を探偵役に添えたらどうかという、なんとも石持浅海推理小説です。

温かな手 (創元推理文庫)

温かな手 (創元推理文庫)

人間の上位捕食者であろう「ギンちゃん」「ムーちゃん」は、他人のエネルギーを手のひらから吸収することができます。けれど、心の清らかな人のエネルギーのほうがおいしいので、その心の健全を保とうと、彼らは尽力するのです。

次から次に殺人事件が起こるのですが、事件に遭遇した「ワトスン役」は精神の復調を得るのに半年を要したり、ご都合主義的殺人連鎖をが起こらない、全編を通してキャラに対する作者の心遣いを感じてしまうのが、なんとも暖かい推理小説です。

わたし、好きだなー、これ。

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余談ですが、東川篤哉さんの小説じたての解説「女教師池上冬子による『温かな手』解説」がとても面白いです。

「宇宙人だ」先生は僕の言葉を遮るように断言した。「『温かな手』は宇宙人を探偵役に据えた傑作ミステリだ。人間だかなんだか判らない、じゃない。彼らはズバリ宇宙人なのだ」

ΩΩ Ω<な、なんだってーっ!!!