特撮博物館に行ってきました

先週の日曜日に特撮博物館に行ってきました。

本当はもっとはやく(出来れば平日に有休を取って)いきたかったのですが、一人で行くより2人以上で行った方が楽しいところなので、都合をあわせようとするうちに8月が終わってしまったのと、9月に入ってからは私が予想外に忙しくなってしまったのとで、結局最終日にお一人様で駆け込み鑑賞になってしまったのでした。


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特撮博物館で、一つ印象的だったのが、ハックだなぁ、というところ。

弾さんのレビューですと、弾さん的には博物館に流れていたバックストーリーはアナログvsデジタルだったようですが、わたし的には集められた数々の職人の「どうだぃ、姉ちゃん、おれっちのハックすごいだろう」を楽しむのが、あの博物館のストーリに見えました。

低予算・短納期で作られる日本の特撮はハックに充ち満ちています。

たとえばこんな感じ。



あはっ♪ビルの窓から漏れる光のお話なのですが、これってば、ふひひ、もろハックですね♪


他の撮影不能エリアの展示物ほんとうにいろいろあったのですが(写真にとりたかった!)、「過去作った物は極力有効活用」「それっぽく見えれば裏がどんなでも気にしない」「本当に予算が無ければビルの屋上にペットボトルの蓋でも貼っておけば、それなりに見える」とかとか。そうそう、メカゴジラの脳みそなんてプラモのランナーはってあるのですよ♪ 巨神兵の表面のディテールもよぉーく近寄ってみると、あれ、これ、ジッパーじゃん・・みたいな。

こういうのを見ると「必要以上の労力をかけないのがプロの仕事」と一概に言ってしまうのは違うような気がして、(これは偏見かもですが)海外のハリウッド映画のような予算と期間が潤沢にある映像を「大規模開発」とすると、日本の特撮は「ハック」みたいね、と思いました。

「ちゃんと」「きれいに」は作っていない。いかに手を抜きつつ効果的に「本物に見える」映像を作るか というハックに心奪われます。うん、これは ハッキングミュージアムでもあるわけですね。


3DCG に(映像の)素人が持ちがちなのが、「デジタルなら安くて凄い映像が作れる」って夢。でもこれは、多分「魔法使いの誤謬」だと思うんです。

魔法使いの魔法ように、素人は仕組みが判らから「魔法」のようあっという間にできてしまうように見えるから、魔法を「簡単に」「なんでも」出来るとものだと思ってしまう。でも、実際は容易でもなければ手間がかからないわけでもない。

もちろんデジタルならではのコストの削り方はあるのでしょう。ミニチュア特撮には難しくてもデジタルなら簡単にできることだってありましょう。でも日本のゲーム業界が3DCGの金食い虫に耐えきれなかったり、ハリウッド映画のメイキングの尋常ならざる手間暇を見るに、デジタルだろうとアナログだろうと、お金と期間がないなら しょぼく なる――ただそれだけなんだと思います。

ちょっとうろ覚えなのですが、音声ガイドか展示物のどこかに、「本当は職人が作って気に入らなかった茶碗をたたき割ってしまうように、納得いかなければ捨ててしまうのが良いのかもしれない。けれど、」みたいなことが書いてあって、なるほど職人がその技と魂を持ちつつ、手っ取り早く実現できる方法(ハック)で、日々映像を作っていく・・・そんな世界なんだなぁ、という感想を持ちました。


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さて、特撮博物館の目玉のひとつ、「巨神兵東京に現わる」です。

あの映画は、「CGIをつかわない」という制約の下撮影されているのですが、それがまるでゆの in Language(ゆの2) とか、コードゴルフ みたい、と思いました。


空を見上げる人を 写真の切り抜きで作ったりは、もしかしたら たんに予算の話かもですが*1東京スカイツリーを見上げる一般人を写真にとれば目線とサイズがバッチリじゃん・・・的 アイデア遊びにも思えますし、どうせ合成するのにわざわざ 犬の縫いぐるみを使ったり、キノコ雲を綿でつくってみたりとかは、まんま あたしたちが技術で遊ぶ時のノリ、そのままです。ニヨニヨしてしまいます。

一方で、崩れるビルの二通りのやりかた、「すごい針金細工」vs 「テンパーガラス方式」は、超絶技巧(本当に凄いのよ)と簡単アイデアハッキングの対決で、これも興奮するものでした。



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もう一つの目玉が撮影可能なミニチュアセット。




ここには、怪獣になった自分を映せる小セットと、巨神兵に蹂躙された東京の大セットの二つがあります。ここの為に出来れば友達といきたかったのですが、無理だったので、観光地よろしく「すみません、写真撮ってくれませんか」&「自分撮り」の 2Hit コンボ!・・・・ぐはぁ、、、写真マニアとしては屈辱の非撃墜マークです。

・・・・いいなぁ。楽しそうだなぁ。


――さて、わたしが行ったのが最終日の一日前と言うこともあって、スマホのカメラももちろん多かったけれど「ちゃんとしたカメラ」を持ってた人も目立ってました。高倍率ズームのコンデジですとか、一眼レフですとか、ミラーレスですとか。そうそう、K-01 が実際に使われているところ初めて見ましたよ♪(コミケットのコスプレ広場に通じる物があります。)

フィルムのカメラが(見る限り)ゼロだ と弾さんはいってましたが、フィルム写真好きとして一言弁明させてください。そりゃ銀塩写真は風前の灯火です。このご時世フィルムカメラを持って行くのは物好きしかあり得ない。にしたって「ゼロ」になっちゃうのは、元々のデジタル:銀塩比率以上に、あの環境が フィルム写真は まったく向いていないというのがあります。

まず、室内で多分光量がプアだと思われること*2。なのに三脚もストロボも多分ダメだろうこと。なにより場所を占有してじっくり撮るのも無理だとなれば、フィルムには全くむかない環境です。普通に判断すれば デジカメにしとこう、となるのは当然です。デジタル:アナログ論以上に、向き不向きが大きい。

かく言うわたしも、三脚が許されれば 中判で絞り込んで撮りたかったし、遊ぶゆとりがあれば HOLGA とか ピンホールカメラを持って行きたかった(ピンホールは本当に楽しそう)。昭和のノスタルジーを込めてフィルムで撮りたいな・・とも思った。けど諦めた、という口でして。

あと、イメージャの大きな「ぼける」カメラは、ミニチュアがミニチュアのように写ってしまうので、小さなイメージャの「ぼけない」コンデジのほうが ここでの撮影には有利です。ちょうど逆チルトでのミニチュア効果の逆ですね。最近のコンデジは高感度画質も良くなりましたので、光量が貧しくても大丈夫なのもうれしいところ。

わたしも ミラーレス(Pen) と コンデジ(Nikon の高倍率ズーム機) の二台持って行ったのですが、終わってみれば主に活躍したのは コンデジの方でした。


ぼけないって素晴らしい!極小イメージャ万歳です。*3


カメラ関係で目に付いたのは Nintendo DS (3DS) で写真を撮っているお子さんが、本当に多かったこと。

そうか、子供が初めて手にする「自分の」カメラって、コンデジでもスマホでもなくって、DS のカメラなんですね。ちょっとした発見でした。


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というわけで、非常に楽しかった特撮博物館でした。最終日一日前ということで、開場30分後(10:30) に付いたにもかかわらず、特撮博物館に入れたのは12時をまわったあたり、芋洗いの展示物を越え 出てきたのはもう 17時近くと、本当にクタクタでした。やっぱり早いうちにどっかで 有給をとって見てくればよかったです。

*1:エキストラを雇って演技させるとお金かかりますもんね

*2:実際は地下といっても外光が入るところなので想像以上に光線状態は良かったです

*3:この例はぜんぜん条件をそろえていない(Pen側が絞り開放とか)なので かなりアンフェアなのですが(^^;