ThinkPad X121e 3045-AC8 を買いました

先代の Linuxノート な Wind Netbook U100 は、今から見れば信じられないくらいキーボードが良く(というか、この5年でキーボードが全体的にダメダメになりましたので、Wind U100 のキーボードが相対的に素晴らしく感じてしまうのです..orz)、コンパクトで、とてもよいマシンだったのですが、5年も使うとさすがにいろいろガタが来てしまっているので、ここのところずっと新調したいなっと思っていました。

個人の好みとしては 理想のサイズは 10インチのマシンです。しかし、ネットブックブームも去り、かつての「Netbook Edition」のような狭い画面に特化したデスクトップが壊滅状態にある昨今では、現実的な落とし所は 11インチかしら、と思います。でも11インチって Windows 8 のせいで「ノートPC」としては贅肉が多いのばっかなのよね..。難しいです。

そんなことをうっすらと思いつつあるなか 発表された 新しい XPS 13 は、わたしの心を鷲掴みにしました。

11インチのフットプリントに 13インチを収めた狭額縁仕様というのは本当に魅力ですし、XPS 13 は ubuntu と相性が良いことも期待できます。わたしにとって大事なキータッチも、これまでの XPS 13 はなかなかなものでしたから、あたらしいのも期待していいんじゃないかな。

11インチフットプリント✖Linuxフレンドリ✖良いキーボード――これはキラーコンテンツ(?)よ!ちょっと無理してでもこれを買ってしまおー、、、と即ポチしそうな勢いで大いに盛り上がっていたのですが、いやいや落ち着けわたし、さすがにこの金額を実物を見ないで買うのもちょっと思いましたので、実物を見るため秋葉原に行きました。が、

・・・・・・触ってみたらキーボードがダメでした。

ストロークに乏しいプチプチした感じになっており、キートップ形状も 今の XPS 13 の 緩やかな窪みと丸みを持ったものから単なるタイルになってしまっています。キーを打つと結構たわむ。うーん、薄くしようとするとこうなちゃっちゃうモノなのかなぁ。

もちろん 今どきのPCとしては比較的悪くはないキーボードなのですが、キーボードマニアな わたしとしては合格点をあげられないキータッチ。これじゃちょっと買えないなぁ。そこ以外は素晴らしいマシンだと思うので、本当に玉に瑕。無念じゃー。

ちょっと余談ですが、個人的にはここ数年のノートPCのキーボードは薄型化のためかストロークがまるでなくなり、全体的にキータッチの劣化が酷いと感じています。だから、過去のそれほどでもないキーボードが相対的に素晴らしく感じてしまうのですが、それはまるで地盤沈下が起きているようで、マニアとしては嬉しくない風潮です。

さて、話は戻して、せっかく秋葉原まできて現物を拝みにきたのに、期待はずれでがっかりトホホなわたしですが、いずれにせよ Linux ノートを新調したい。では XPS 13 じゃない 別のマシンなら何がいいかな?というと、ちょっと悩ましいところです。

実は Let' Note RZ4 がすごくいいな、とは思うのですが、さすがにあの値段ですと わたしには振る袖が無い感じ。

ThinkPad s30 を心のリファレンスにしているわたしとしては、 Let's Note RZ4 は本当に素晴らしいPCだな、と思うのですが...*1、いつかは
買いたい!

そんなこんなで、「どうしようかなぁ」と思いながら 秋葉原のPC屋さんや中古屋さんをぶらぶら巡ったりしていました。そうしたら ガード下のソフマップで OS なし AMD Fusion APU 版の ThinkPad X121e に出会ったのです。


* * *


X121e にはちょっと苦い思い出がありました。

ネットブック大好きなわたしは X100e をいたく気に入っていまして、だから X120e が日本で発売されないことにブーブー文句を言ってたのですが、X120e の日本発売を今か今かと待ち構えていた所に満を持して現れた X121e。でもそれは「コレじゃない」ThinkPadでした。

「コレじゃない」原因はただただキーボード。キーボードから垣間見える「思想」が ThinkPad じゃないと思ったのです。

今となっては ThinkPad の標準キーボードとなってしまいましたこの配列ですが、デビュー当時「これが本当に ThinkPad か」と信じられない気持ちになりました。アイソレーションが問題なのでも、7段配列ではないのが問題なのでもありません。その配列に ThinkPadらしいこだわりがなかったことが問題でした。


ひとつは、ファンクションキーの区切りがないこと。

ファンクションキーは4つずつ区切られるのが打ちやすさの秘訣で、ThinkPad はそれを愚直なまでに守ってきました。空白がうちやすさにつながることをちゃんと理解しているのが ThinkPad のよさで、だから横幅が狭くてスペースが作れない機種であっても4キーごとにフィンガーサインを設けて工夫しておりました。

でもこのキーボードはその配慮はありません。X100e にはあったのに!(←ここが重要)


(s30のファンクションキー)


もうひとつが、PrtScn を一等地に移動させつつ、Insert キー, Pauseキー、 SysRq キーを省いてしまう(Fnとのコンビネーション表記もない*2 )という暴挙。特に Insert は削ってよいほど使われていないキーではあるまいにと、当時は憤慨したものでした。

キーボードの使われ方は千差万別で、ある特定の使い方での「改良」してしまうと、必ず使いにくくなる人たちが出てしまう。そしてその「バイアス」は「改良」する人間には意外とそれがかかっていることに気が付かないのです。だからこそ「標準」にこだわる。それがセクシー ThinkPad ポリシーだったのに...。――ファンクションキーのフィンガーサインを軽視する姿勢とひとりよがりの「改良」を良しとしてしまうこと、この2つは そんな「ThinkPad の思想」は変わってしまったのかもなぁと、実感させられる出来事でした。

また、PrtScn の破格の待遇は 購入意思決定者の方向を向いてしまい、真にユーザーの方を向かなくなったのかなぁ、との邪推してしまいます。いかにも「企業のPCを選定する人」の声としては大きそうですし、逆に「選定されたPCを実際に使う人」の声として、ここまでの一等地を与えるほど大きいものではないと感じるから*3

まぁ、すくなくとも「キーボードで文字を打つ人」を主体とした UI を想定しなくなったということでしょう。トラックポイントがだんだん軽視されていくのも同じ流れのことですし、そういう変化がThinkPadにも訪れたのだ、とわたしに理解させた出来事でした。


* * *


そんなしょっぱい思い出を胸に、目の前の X121eを眺めたのですが、そういう「経緯」を外してみれば、意外にも良さげなマシンに見えてきます。今思えば X121e 自体の出来というよりは ThinkPad の変質が好ましくなかっただけなのです。坊主憎けりゃの類ですね。

今となれば格安路線だけでなく全部がこのキー配列になってしまいましたし、トラックポイントからボタンを取り去ったり*4ThinkPad 8 ではトラックポイント自体がなくなっちゃいましたし、なにより 驚愕の x1 carbon adaptive keyboard事件とかありました。もう X121e くらいなら可愛いもんです。

キータッチはしっかりしていますし、キーボードはほとんどたわみません。筐体がしっかりしているのですね。懸念の Insert も Fn + I で入力できるらしいですし*5。OSなしでその分お安いというのも、Linux マシンを探しているこちらとしては好都合。メモリが MAXの(MAXは8GBでした...orz) 4GBのっているのも素敵。

しかも目の前にあるマシンはほとんど使用感がなく、ThinkPad の中古なのにキーボードがテカっていない!...どうしよう、いっちゃう?

ただ、「当時の記事で Core i3 なマシンのほうが全面的によさ気で Fusion APU 版買うんだったら Core i3 にしましょう的な記事があったなぁ」とかとか 「E350 で Linux すんなりはいるのかしら」とかとか スマホで調べながら迷っているうちに、北欧っぽい(主観です)お兄さんが、インド人っぽい(主観です)店員さんに「これくださいな」して、目の前で Get されてしまったのでした。

あーうー。


* * *


「こういうとき、迷った方が負けなのよね」と、脳内スレッガーさんが劇中とは逆のセリフをしゃべるなか、失意の秋葉原徘徊をするわたし。逃した魚はデッカく感じますね。とほほ。

とかとか思いながら、あれま、別のお店で見つけちゃったのですよ ThinkPad X121e。お値段は据え置き 19,800円で、メモリも4GB、OSナシまで同じです。でも違うのは今度は Core i3 モデルなこと。残念ながらこちらの方は多少使用感がある感じだけれども、それはまたそれ、中古だもん。

これは・・・たぶん運命。きっと運命よね。

というわけで、買ってしまいました。

なんか 当初の目的であった XPS 13 からは 大きくランクダウンした気もいたしますが、キータッチも悪くないですし、大きさ・重さも妥協できる範疇で、結構満足です。

過去に逃し、今日 眼の前でも逃した魚ですので、三度目の正直で釣り上げたマシンは、なんだかとっても満足度の高い買い物でした。

余談

いまどきのPC って薄くなったりですとか、タブレット一体化ですとか、ヨガったりするためだったりですとかでバッテリー交換できないのが増えてきてます。

普段は全く気にしていなかったのですが、今回中古あさりをして改めて感じたのが中古だと十中八九バッテリーが劣化しますので、交換できないのばっかりになることが、モバイルPC を現実的に中古で調達できないという自体につながるということ。モバイルほど交換できないのが多いってジレンマもありますし、安モバPC は中古でも厳しくなる一方です。

キーボードのキータッチの劣化もそうですが、明らかに安物であるはずのかつてのネットブックにすら負ける箇所が出始めている昨今のPCを見ると、今の薄型化の流れは「無理なダイエット」の域なのかなと懸念を抱きます。

逆に、この世代の厚みに余裕のある設計とか「バッテリーが交換できるのが当たり前」という特徴は
しばらくの間、隠れた「ちょっとした強み」になるかもと思いました。

そういう意味でも Let's Note RZ4 は超魅力的ですよね。ちびで軽いけど、ぽっちゃり健康的です。いつかはお迎えしたいな。

追記: s30とくらべて

早速 X121e を持って喫茶店に出かけようとして、「そういえば、インナーケースが必要だ」と手持ちの物をゴソゴソあさったら、びっくりしたことに、ThinkPad s30 に使っていたものがピッタリでした。

s30 は 10インチ(しかも 4:3 比率) のマシンで、大変フットプリントの小さなマシンです。一方の X121e は 11インチといいつつも、結構余裕のある設計のせいでほとんど 12インチマシンに近い。なので中に収まること自体 予想外だったのですが、並べて比べてみて納得、この2つのマシンは奥行きがほとんど一緒でした。

こんな感じで比べるとわかりやすい。こうして横に並べると 似たり寄ったかのサイズに見えます。

もちろん左右幅は全然違いますので、こんな感じで比べると、さっきの写真にくらべサイズ差が大きいように見えます。目の錯覚じみて面白いです。

で、体感では、一回り以上(ふたまわり近く)大きいマシンに見えます。でもX121eはベゼルに余裕がありまくりなので、実は s30 よりも液晶の縦幅が短いんですね。これはちょっともったいなく感じます。

キーボードはさすがに X121e はスペースに余裕があり、特に無理をしている印象を受けません。比べる s30 のキーボードは 7段配列(一部変則) と相まって ミチミチ感がすごいです。


見た目の高級感の差が著しいキーボードですが、キータッチは意外にもどっこいどっこいと言った感じ。

s30 も ThinkPad の中ではまぁまぁのキータッチの部類ですが(ThinkPad 600 あたりの至高のものと比べるとの意)今の目でみるとかなりゴージャスなコストのかかった筐体で、片や X121e の半分ネットブックのようなコスト要件のマシンでここまでの打鍵感を実現しているのですから、X121e のキーボードは(配列デザインを除けば)結構な出来物なのかもしれません。

*1:過去に R 系は キーボードだけが許せなくって、買いに行こう!と心に決めて出かけてもお店でキーボード触ってしまうと買わなかったりしたのですが、RZ4は実機でキーを叩いてみても昔のような「がっかり」を感じませんでした。これはRZ4のキーボードが昔のRよりよくなったのか、わたしの基準が緩くなったのかよくわかりません。 「たいしては良くはなってない」とは感じるのですがでも「これは許せる」とも思ってしまうあたり、その一線がどこにあるのか、自分でも謎というか、人間の感覚は難しいというか...。

*2:表記がないだけで、実はできるというのはずいぶんあとから知りました。

*3:後年 PC Watchさんの記事 の「最近は企業内で若いIT管理者がPCを選定しており、そうした若いIT管理者は6列配列のキーボードに慣れ親しんでいる」「逆に7列であることが“古くさい”というイメージを持たれることが多くなってきた」を読んだ際には、「あぁ、やっぱり」と思ったものでした。

*4:最近は復活の兆しがありますが

*5:Pause は Fn + P, Break は Fn + B, SysRq は Fn + S だそうです