LOMO と LAMY と 物欲スイッチ
律が使っているシャープペンは LAMY の Safari なのですけれど、これが 2,500円くらいすると聞いて「高っ!」と思ってしまいました。
これが「製図用」とか、そう言う付加価値が付いているならいざ知らず、普通のシャープペンに 2,500円とか高すぎだろう・・・と考えてしまってはじめて、あぁ、たぶんこれが 澪の LOMO LC-A が、イマイチ けいおん!効果に乗り切れない理由なのね(楽器以外では抜群の出現回数を誇るのに!)、と思いました。
Safari は別に高級シャープペンというわけじゃなくって、実はティーンエイジャー向けのシリーズだったりします。律のシャープペンとしてチョイスされたのも自然です。
よく行くおしゃれ系雑貨屋さんでも定番のアイテムで、名前は知らねどその形は覚えていました。値段も確かに見ていたハズですが、その店で見たときは特に「高っ!」とは思わなかったハズ。・・・まぁ、なんでもちょっと高いお店(「おしゃれ税」がついている)なので、その空気に呑まれてしまっていたのかもしれませんですね。おしゃれ空間に引きずり込むのだーっ。
というわけで、確かに機能だけを見れば高く感じる LAMY Safari ですが、あの可愛いデザインを気に入ってしまえば、高校生でも買ってしまうような物だったり。
というわけで、無駄にブルジョワというわけでもないのに オタクさんが イマイチ殺到しないのは、お金を払える「価値」に関する感覚が、作中人物とオタクさんの間でマッチしないから、かな?、と思います。
Safari は、確かに品質が高いのですが、それを踏まえても普通の人には割高に感じてしまえるものです。あのお値段を納得できるかは「その可愛らしさに価値を認められるか」です。LAMY の Safari とお値段をみて、「そのくらいのシャープペンならもっと安くて同じようなのが買えるよ」とか「その値段だすならもっと良い(例えば製図用の、とか)ペンが買えるよ」とか思ってしまったら、もう負けです。
逆に澪ホンこと AKG K701 は、かなりの高額製品なのに、そこら辺の価値観が よくオタクさんとマッチする。マイナーメジャーで、視聴者層と「よいモノ」の感覚が一致する、だから火が付いてしまったり。つまり「いいもの」という感覚を共有出来るか、が勝負(?)の分かれ目。
「けいおん!が好きだから」は、価値観が共有できて初めて効いてくるもので、それが出来なければ価格が安かろうが「イラネ」となる当たり前のお話。そこらへん、単なるミーハーだけで動かされない、澪が使えばなんでもいいってわけじゃない、自分の中の価値観と照らし合わせてはじめて購入に走る オタクさんは、ちょっと賢い消費者だと思います。
* * *
LOMO LC-A も、その類かな、と思います。良いカメラではないのです。
時代遅れのカメラのさらに共産圏による劣化コピーという、普通のカメラ好きの価値観では 5,000円でも「高い!」と思うような代物です。普通の人の感覚なら「その値段を出すなら普通のデジカメを買ったほうが良いじゃん」です。デジカメのほうが便利で、しかも綺麗に撮れてしまいます。*1
ただ、このカメラが好きな人達は、ローテクゆえのレスポンスの早さ、撮れる写真の失敗のしやすさ、レンズ性能の悪さからくる 現実に忠実でない変な写り方、ついでにデザインのかわいさ に価値を認める、そういう価値観の世界に生きています。わたしは LC-A で撮影するほうが全然愉しいし、撮れた写真をみるのも LC-A で撮ったモノのほうが面白い。だから LC-A は 価値があるカメラになるのです。(でも綺麗に映るのは COOLPIX!)
だから、「LC-A、いいなー、ほしいなー」となるわけで、そこにけいおん!で トンッと背中を押された感じ。そういう価値観は変態的だから、より普通の価値観で「いいなー」と思える D40ですとか、DP-1 ですとか、もしかしたらライカですとか、ソッチのほうが けいおん!効果は高かったかも。
* * *
意外だったのは「フィルム」がネックになるという意見。
わたしはそう言う感覚がなかったのですが、性能論として「デジタル > フィルム」という感覚って普通のことなのかな?――と思ってしまう。わたし、何か麻痺しているのかな?と改めて思いました。
そういえば、と思います。男の子はいつだって、いつまでも、メカフェチです。
カメラ趣味の おじさま や おじいさま には、なんだか「偏屈にフィルムにしがみついてそう」なんてイメージをしてしまうけれど、実は彼らは歴戦のメカフェチで、だから自分の好みに合致するか否かという問題はあるけれど、基本的にはデジタルイメージングがいいものだと思える素養を十分過ぎるほど持っています。つまり、「機械式レンジファインダーデジカメが欲しい」なんて言ってしまえる人種です。ここら辺は、腐っても、年を取っても男の子は男の子だと思っちゃう瞬間。
じゃあ、今フィルムを好んで使う層はどんな層なの? ですが、それは 若い子、特に若い女の子なんだそうな。要はトイカメ趣味とその周辺なのかな? けれど、こっちは逆にデジタルにもフィルムにも全然思い入れが無いからそうなのだと思います。
男の子回路的には HOLGA や Diana みたいな緻密に映らないカメラに、情報量が売りの中判フィルム入れて撮る姿は、とっても無駄に思えます。カメラも大きくなり、フィルムも現像もプリントも 35mm判にくらべ バカみたいにお金が掛かるのに、その代償をはらって手に入れるべきウリを殺してしまっているのだから、そりゃそうですよね。 でもトイカメ趣味者は、そんなの全然気にならない人達だから、もう、デジタルかフィルムかだって、どうだっていいのよね。
* * *
冒頭の写真は LAMY Safari シャープペンシルです。
「買わないんですか」と言われたら、なんだか妙に気になってしまって、そうなれば 押さえる理性を持たぬ物欲魔神のわたしですから、買ってしまうのは必定というもの。