キーボード用語

いまさら目くじらを立てたって...ですが。キーボード −「SteelKeys 6G」− レビュー

この打鍵感は,だいたい以下の3パターンに分類可能だ。

  • クリックタイプ:スイッチのオン/オフを指先で感じられるタイプで,打鍵音が大きい
  • リニアタイプ:押しただけでは,どこでスイッチがオンになったか分からないタイプ。打鍵音は小さい
  • タクタイルタイプ:クリックタイプとリニアタイプの中間。押し込むと少しだけカチッとしたフィーリングがあり,打鍵音はリニアタイプ並み。「クリックフィールタイプ」ともいう

メンブレンスイッチの多くがリニアタイプを採用するので,現在の主流はリニアタイプになっているが,疑似メカニカルスイッチを採用するメンブレンだとタクタイルタイプも少なくない。

キーボード −「SteelKeys 6G」− レビュー

この区分け自体やその説明にも意義を唱えたいのだけれど、なによりも 主流がリニアだと言い切ったのに驚きました。そんなわけはありません。メンブレン・ラバードームのスイッチって リニアに加重が増えたりしないし、ラバードームの座屈を利用してちゃんとクリック感が有るように作ってあります。(ていうか、リニアをラバードームでつくれるのでしょうか)

こういう記事かくなら調べてから書こうよ、と言いたいです。どうみてもこの記事はノー調査で書いているとしか思えません。でも、キーボード関連の用語って、調べても正解が見つかりにくい(というか見つからない)。

私も自分のサイトを立ち上げる際にさんざん調べたのですが、結局よくわからなかった用語もちらほら。ステップ・スカルプチャー(step sculpture) とか カーブド・スカルプチャー(curved sculpture)なんか、今でも正直解らないです。

偉そうなこと言っていますがうちの説明も今見れば酷い出来です。反省。と言うわけで、キーボード関連用語をサクっとまとめてみました。

打鍵感について

前述の記事の用語を取りあえず。


クリック(click): クリックとは「カチカチ」とかいう擬音語で だからそのまんま「カチカチスイッチ」。カチカチ音を鳴らすことで 音によりキーが入力されたことをユーザに知らせます(つまり、ワザとならしています)。もちろん音だけでなくカチカチした感触も指すみたい。後述しますが、日本では「カチカチ音が鳴るスイッチ」という意味で「クリック」という言葉を使うことはまれで、たいていはタクタイルと同じ意味で使われています。ちょうど「ホームページ」の様な物かしら。

タクタイル(tactile):「タクタイル」で触知できるという意味。キースイッチの場合スイッチが入ったぞ、と触知できることを指します。大抵 押下圧変動(ある点より下で急に反発力が低くなってカクンとなる)でスイッチが入ったことを知らせてくれますが、スイッチが入ったのが(触覚で)解ればなんでもよいという感でもあります。というわけで、クリックを含む概念です。「カチカチ」の印象が日本では薄い「クリック」をそのまま流用して「クリック感」と呼ばれることが多いです。

リニア(linear): 押し込み量に正比例してキーの反発力が強くなるもの。PC用キーボードでは殆ど見ません。現在のキースイッチは押下圧変動でタクタイルフィールを実現しているので、リニアでタクタイルというのは出来ない相談なのですが、キー表面に電気ショックを流すとか、振動させるとかすれば リニアでタクタイルなキーボードも実現可能です(たぶん)。



と言う風に、用語としては、びみょうに横ならびしないものです。打鍵感に関してはタクタイル関連だけでなく、底突きの感触(ゴムの具にゅっとした感触と、コツコツとはっきりしたの感触等)や、打ち抜き感(タクタイルの後のストロークの長さ。カシュン、カシュンなんて擬音語が使われたり)も大切です。

ちなみに なにかと話題のCherry MX スイッチは、以下のような名前付けをしています。(あくまでCherryの自社製品のバリエーションに対する名前付けであって、これがそのまま汎化できるわけではないのに注意)

  • MX青軸: MX with click tactile feel
  • MX白軸: MX with tactile feel
  • MX茶軸: MX with tactile feel (ergonomic)
  • MX黒軸: MX lenear action

例えば青軸はカチカチ音が鳴るし、スイッチが入ったと指先で解るから click でtactile-feel なわけです。

http://park16.wakwak.com/~ex4/kb/tech_cherry_mx.htm

キーの段の高さ並びについて

これは本当に訳がわからないです。スカルプチャー(sculpture) は彫塑とか彫刻とかそいういう意味ですから、ステップスカルプチャーは「階段上の形状」くらいの意味にしかとれない気がします。でも、以下のような意味で使っていることが多いです。


ステップ・スカルプチャー(step sculpture): キーが階段上に並んでいること。それも等差ではなくって、横から見たらちょうど円筒に内接するような感じで段差がついている物です。この用語を使う場合、キーの基盤はまっすぐな板であることまでを指す場合があります。

シリンドリカル・ステップ・スカルプチャー(cylindrical step sculpture): 上記ステップ・スカルプチャーにシリンドリカルをくっつけて、 「各キートップの表面は円筒状にくぼんでいて、キーの配置は湾曲した階段状」とキー面全体の造形を指すように使われることも多いです。が、最近は別の解釈をされることもしばしば。(後述)

カーブド・スカルプチャー(curved sculpture):上記ステップスカルプチャーと同義です。ただ、カーブド・スカルプチャーといった場合、キーの基盤も円筒状に湾曲している場合が多い気がします。

ステップ構造 (step structure?): キーが階段状に並んでいるタイプ。等差なので本当に階段みたいなのを言います。これは本当かな?



シリンドリカル・ステップ・スカルプチャー(cylindrical step sculpture)の解釈には、上記ステップ・スカルプチャーの意味(円筒に内接するような段差の階段配置)相当なんじゃないかと言うのもあります(単語の意味だけ拾えば、こちらの方が本当っぽく感じてしまう)。「ステップ構造」と「ステップ・スカルプチャー」なんて、いかにも苦しいですし。メーカでは シグマAPO さんの解説がそうなっています。

でもキーボードの仕様を見ると、カーブ状にキーの段差がついている物でも単に「ステップ・スカルプチャー」て書いてある事も多いんですよね。id:abee2 さんのコメントをみて、そういえば、、、と思ったのですが、シリンドリカルがキートップの形状じゃないほうの解釈って最近になって見始めた気がします。



日本のキーボードサイトでこのあたりを情報の草分けはのぐ獣さんちで、猫のうちみたいな 生まれの遅いキーボードサイトでは こちらをリファレンスとしているところも多いと思います。しかしそののぐ獣さんちでも、

昔のNECのパソコンなどでキーボードのスペックに、”シリンドリカル・ステップ・スカルプチャー”などの表記があったと思います。これがどのような意味を示すものなのか調べてみたのですが、各社さまざまな表現方法をしていて、いまのところ正式な文献が見つかりません。ある程度憶測ではありますが、

と断わりつきの情報になっています。むー、本当にわけがわからないです。


一時期は、カーブ状なステップ な並びでないものは よほどコストにケチったキーボードという感じでしたが、ノートPC のフラットなキーボードに影響されて、ワザとカーブさせないものが増えてきました。Kinesis とか立場ないよぅ。

キースイッチについて

メンブレンスイッチ(membrane switch): 薄膜スイッチ。membrane は「膜」の意味で、接点シートと接点シートで穴あきシートをサンドイッチした構造のスイッチです。簡単な構造ながら、耐久性も高く キーボード向きといえばキーボード向き。キーの構造上、底突きしないと入力されません。これがネック。また、完全なNキーロールオーバーにはあまり向いていないかも?

カニカルスイッチ(mechanical switch): スゴイ乱暴な用語ですが、機械式スイッチ。機械スイッチなら何でも良いと言いたげな乱暴なカテゴリー。だからスイッチの種類が重要になってきて、アルプススイッチ だとか Cherry MXスイッチだとかで マニアが熱く語ります。

静電容量スイッチ (capacitive swith?): 静電容量の変化を検出して入力を得るスイッチ。接点が存在しないのが特徴です。ただし今では東プレのアレを指す用語になっていて、コニックリングによる静電容量変化を検出するスイッチという意味になっている気がします。(他の方式もあります。触ったこと無いけれど打鍵感はあんまり良くないらしい)底突きの必要が無いため、ラバードーム式のアクチュエータを殆ど無制約でチューンできます。(Realforce の打鍵感の良さはここに依存するそうな)

導電ゴムスイッチ(conductive rubber switch?): 基板に櫛歯状に触れそうで触れないパターンを作って、そこに導電ゴムを押しつけて導通させる方式です。ゲームパッドでは良くみる方式ですが、キーボードでは珍しいです。IBM の 5576-B01鍵盤くらいかしら。


スイッチは 直接打鍵感を作り出したりはしないのですが(アクチュエータの役割)、しかしそうはいってもメカニカルスイッチでは アクチュエータ込みで「スイッチ」と呼ばれますし、
スイッチの方式により打鍵感も制限されるので重要なファクターです。

アクチュエータについて

キートップを持ち上げる力。名前が付いた方式は、スイッチと分離していて、かつタクタイルの出し方等で注目を浴びているものばかりです。


ラバードーム(rubber dome): ラバーカップとも。ゴムをドーム状に形成したもの。座屈するのでタクタイルを作れます。

バックリング・スプリング(buckling spring): まんま「座屈バネ」です。スプリングをギューっと圧縮するとき、ちょっと横に力がそれるとカクンと折れ曲がりますよね、それを利用したアクチュエータです。IBM の Model M とか、5576鍵盤とかで有名。メンブレンスイッチと組み合わせて使います。

キーの構造について

キートップ(key top):説明不要、そのまんまです。最近は部品として独立していないものが多いです。

プランジャ(plunger): 突入するもの の意。キートップが付けられる 上下駆動する棒。東プレ用語。キーボードサイトなどでは 一般的には 軸、スライダ(slider)とも言われます。(メーカーが使っている例はあんまり知らない。)最近の安いキーボードではキートップと一体形成になっていて、摺動グレード樹脂を使ったプランジャは高級キーボードのあかしになってしまいました。しくしく。

ハウジング(housing): 枠・筐体の意味。東プレ用語で プランジャが上下駆動するレールを含むスイッチ枠部品を指します。

スライドレール(slide rail): スライダ(軸)が滑るガイド部分。むちゃくちゃ和製英語っぽいです(もしかしたら 私のサイトの造語かも(^^; )最近のキーボードでは筐体上面と一体形成になっている場合が多いです。

パンタグラフ(pantograph): キートップの保持機構。キートップをスライダ & スライドレールではなく、電車のパンタグラフのような構造で支えた物です。薄いキーでもがたつき無くスムースな上下動が可能です。ノートPCのキーボードは殆どがこれ。

キーの配列について

QWERTY配列: 「くわぁてぃ」と読みます。現在のデファクトスタンダードです。文字キーの下から三段目が Q,W,E,R,T,Y... の順に並んでいるためそう呼ばれます。こういう配列になったのは、「タイプライター時代にバーが絡みにくいように頻出キーをバラして配置した」とか「3段目のキーだけで "typewriter" と入力出来るように並べられた」とかいろいろ言われていますが、前者はまっかな嘘、後者は「どうかな〜、おもしろいよね」と言ったところです。本当の理由は、資料が残っていないのでわからないのですが、おそらくこういうことだと思われます。

DVORAK配列: 「どう゛ぉらっく」と読みます。こちらは人名由来。「どう゛ぉるざーく」とも読めるんだよ、というのは豆知識。もうちょっと頻度の高いキーを打ちやすい所に置こうよ、とオーガスト・ドヴォラック(August Dvorak)さんにより考案されたキー配列です。とはいえ日本語ローマ字入力ではかえって使いにくいという罠があります(そりゃそうです)。また記号キーが冷遇されているので、プログラマにもちょっとつらい。世間のイメージほど良い配列ではないんだよと、個人的には思います。


キー配列については キー配列 - Wikipediaが 絵付きで非常によくまとまっているので、コッチを見た方が早いです。(ただ、日本語配列については入力方式とキー配列がゴッチャになっているのがいただけないです)


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以上、こんな物でしょうか。間違いや紛らわしい、この用語は押さえておかなきゃダメでしょ等 ございましたら、指摘頂けると幸いです。