よくある話

ときどきの雑記帖 リターンズさん経由、バカが征くさん。

その先輩とか師匠とかは、それはそれで立派なんだけど。だったら、もう一歩踏み込んで、会社や組織全体を良くできないのかっていう疑問が残るんだよね。

鋭い。あまり書きたい話ではないので、その辺は書きませんでした。

もう一歩踏み込んで、会社や組織全体を良くできないのか――もちろん師匠は実行中でした。しかし敵はあまりに強大で、当時の私もそこらへんに目を向けるほど大人でもなくって、おまけに途中で逃亡してしまって、見届けていません。

師匠をもってしても戦う相手はあまりにも強大で。長期戦を覚悟して戦っていたのは知っていますが、師匠ぞっこんの私にも勝算が有るように見えてはいませんでした。


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「不渡りだしちゃうから給料半額来月まで待って」とか、社内のネットワークが有志による自腹敷設だったり、開発用PCが他のプロジェクトの納品物件を納品前に横流しだったりとか、開発機材の殆どが業を煮やした社員による私物だったりとか、メールアドレスが部にひとつだったり、・・・・・そんな会社だったので、プロジェクト並行回しは、ダメとわかっていてもやらなきゃつぶれちゃう、というのも自明の理でした。

社は 部長が仕事を取り、平(課長以下)が開発をする仕組みでした。仕事をとってきた部長は、どんなに採算があがらないものでも取って来た。社内に空いている人がいなくても取ってきた。にもかかわらず赤字になったのは開発する奴らが悪いという、営業と開発が対等ではない力関係にありました。・・・もうさ、ハメだよね。

師匠が取り組んだのは、採算のとれる仕事を取れるようにすること。ひとつの仕事でちゃんと採算がとれないから、自転車操業的に仕事を取らなくっちゃまわせないから、社内の人手以上の仕事を取らなくては成らない。だから最初に改善すべきはそこで、まずは老害以外のパスで仕事ととり、利益を出し、実績を作り・・・。(老害に比べれば)若い課長とタッグを組み、改善にむけがんばっていたのですが、残念ながら成功したところは見れていません。

ひとつは、にもかかわらず「俺が仕事とってきた、あいてる人がいないとは何事か」論理の部長様の差込仕事により本当に仕事が回せなくなってしまったこと(納品しにいくときには何も出来ていなかったとか・・・タスケテ)。もうひとつは、その大事な一歩をつぶしてしまう獅子心中の虫がいたということ。つまり。だって会社から逃げちゃったから。

1ついえるのは、人間一人の力なんてタカが知れてるということ。だから、仲間を作り、仲間を助け、仲間を頼ることが本当に大切なんだよ。そうやって人の輪を広げることで上へと遡る流れができてくるんだろうと思うんだよ。

一方で、師匠は仲間作りにも積極的でした。社内にまともな技術者がいない。ハッカーらしく、ないなら作ってしまえ。師匠が育てた弟子は、引き抜かれることをいいことに社内中に広まっていきました。セイヨウタンポポが負ける道理が無いとおり、そこに確かなコロニーを作っていきます。

ですが、出来る人から辞めていくのもこの業界の姿です。育てた端からやめていく姿を見て師匠は何を思っていたのでしょうか。それでもわずかに根付いた人に希望をみていたのか。私にはわかりません。


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師匠は確かに会社をよくしたと思います。ちゃんとしたプログラムが良いものだという認識を社に広めたのは師匠です。「動けばいいじゃん」がちっとも良くはない、こういったあたりまえの認知が無い現場で働いているプログラマも多いと思います。師匠のチームの出した実績は、まず品質の高いプログラムがビジネス的にも意味があることを証明して見せました。泥沼の先には泥沼でないものがあるとまず示して見せました。そしてちゃんとしたプログラミングが出来る人材を他のチームにもばら撒き、そこで確かな底上げがありました。師匠は種を蒔きつづけていました。でもそこまで。

結局、わたしは見届けていないので、この話の続きがどうなったかは知りません。師匠とタッグを組んだ営業側の仲間も、その後やる気をなくして退社したと聞いています。昔よりは残業は減ったとも聞きます。私がやめた次の年の忘年会は、それまでのピザや寿司ではなく、それぞれの机の上にマクドナルドのチーズバーガーが一個づつ乗せられたそうです。ですが、会社のサイトを見るとまだこの会社はあるようです。

師匠について最後に聞いた話は、腰を壊して車椅子生活してるよ、という話。直るものであると聞いてほっとしたのですが、その後の話は知りません。

師匠の話はこれでおしまい。